【インバウンド戦略】MATCHAと西武グループの共創事例
2026.05.18
2026年4月23日にマーケティングWeekがビックサイトで開催。西武グループの新規事業創出を担う「西武ラボ」の伊藤航氏と、訪日観光客向けメディアを運営する株式会社MATCHAの青木優が登壇し、両社の共創によるインバウンド戦略の成功事例を語っています。
歴史的価値を有する宿泊施設「伊豆長岡温泉 三養荘」の集客倍増施策や、新富良野プリンスホテルにおける「Furano bonchi powder」のブランド化など、具体的なプロジェクトの裏側を説明。
大企業の持つ「困りごと」とスタートアップの「強み」を掛け合わせ、いかにして現場を巻き込み、グローバルな視点で地域の潜在的な魅力を掘り起こしていくべきか。日本観光の次代を切り拓くための実践的なヒントを探ります。
登壇者紹介

青木(MATCHA): 伊藤さんとこういうオープンの場で話すのは初めてですね。今日は「インバウンド戦略 西武グループとMATCHAの共創事例」というテーマで進めたいと思います。
最初に、簡単に双方の自己紹介をしながら、具体的にどのような取り組みをしたのかについて、話ができればと思います。参加者の方は150名くらいかと思うのですが、実際にこの中でインバウンドの領域に対して自社にお客さまがいる、海外の方に対してビジネスをされている方はどれくらいいますか?(会場の反応を見て)3割くらいですね。ありがとうございます。
伊藤さんから西武ラボの紹介を含めて、自己紹介をお願いします。

伊藤(西武グループ): 西武ホールディングスの伊藤と申します。私は今4社目で、2020年のコロナ真っ只中に西武グループに入り、今7年目になります。

西武というと西武ライオンズや西武鉄道のイメージが強いと思いますが、今は不動産事業を核としており、全国に約1億平米の土地を持っています。ホテル・レジャー事業では、国内外に約100ホテルを展開しており、西武鉄道などの都市交通・沿線事業も行っています。

私の所属している「西武ラボ」はいわゆる新規事業の部門です。グループの持ち株会社である西武ホールディングスにおける経営企画本部の中に新規事業部があるという、少し珍しいパターンです。特徴としては、新規事業を経営課題を解決するための「手段」として使うというアプローチをとっています。オープンイノベーションという形で、自分たちだけではなく、スタートアップや協力企業と共創して新しいイノベーションを起こすことに注力しています。
青木: 伊藤さん、ありがとうございます。今「共創」という言葉はありふれていますが、なかなかうまくいっている例は少ないと感じています。そのポイントなども後で触れられたらと思います。

私は2013年にMATCHAを設立し、今13期目になります。

インバウンドメディアを主軸にスタートし、「日本の価値ある文化が、時代とともに残り続ける世界」をビジョンに掲げています。メディアを通じた送客や、それに伴うインバウンドマーケティング支援に取り組んでいます。

創業から13年、数多くの自治体や企業のみなさまと取り組ませていただきました。今回はその中でもいい取り組みになった西武グループとのお話をしたいと思います。
共創事例1:インバウンドによる売り上げ前年より大幅アップ|伊豆長岡温泉三養荘

青木: ここから西武さんとの連携の取り組みを2つ紹介します。一つは伊豆長岡にある「三養荘」です。旧三菱財閥の岩崎久弥氏の別荘として建てられた、4万2000坪(東京ドーム約3個分)という広大な敷地を持つ、素晴らしい日本庭園のある建築物です。

昨年10月頃からプロモーションを行いました。MATCHAのメディア発信やKOL(インフルエンサー)の起用、日本在住の外国人へのアプローチなどを行いました。認知から予約までのジャーニーを丁寧に整理し、各施策を目的ごとで実施します。目的やターゲットに応じて、在日外国人に向けたアプローチも実施します。

結果として2025年12月から2026年3月の売上対比で、訪日客が大幅に増加しました。サウジアラビアやブラジルなど、これまで来なかった国の方々も訪れるようになりました。
伊藤: 三養荘は、日本人も知らない隠れた財宝のような場所です。西武ラボが横串で入り、MATCHAさんのようなスタートアップと連携することで、こうした結果が出せた好事例だと思っています。
共創事例2:「Furano bonchi powder」のブランディングの可能性|新富良野プリンスホテル

青木: もう一つは、新富良野プリンスホテルのリサーチプロジェクトです。富良野は冬と夏は人気ですが、春と秋の需要が落ち込むのが課題でした。そこで、なぜお客さまが富良野を選んだのか、なぜプリンスに泊まったのかを深掘りするために、今年の冬に外国人へのインタビュー調査を行いました。

実際に作成した調査概要書類(MATCHA作成)
伊藤: 富良野の雪は非常に質が良く、我々は「Furano bonchi powder」というコンセプトを打ち出しています。北海道のど真ん中にあるため、海側からの湿った空気が山を越えて乾燥し、非常に軽くて乾いたドライパウダーになります。これを科学的に調査し、ブランドとして売り出しています。


青木: 今回の調査で、この「Furano bonchi powder」という言葉の認知はまだ低いものの、体験価値の評価は非常に高いことが分かりました。
伊藤: 事業者がインバウンド顧客に向き合う際、なんとなくの「感覚」や「勘」はあっても、それを定量的に深掘りできていないことが多いです。今回、一人ひとりのお客さまに深く話を聞くことで、自分たちの仮説を再確認したり、新しい発見があったりと、解像度が非常に上がりました。
インバウンド戦略における視点と課題
青木: インバウンドにおいて重要なのは、中の人からすれば当たり前すぎて言語化されていない魅力を見つけることです。例えば三養荘の部屋名が「源氏物語」の世界観に基づいているといったストーリーは、海外の人にとって大きな価値になります。

また、国によってアプローチを変えることも重要です。アジア圏はリピーターが多く国内旅行に近い感覚ですが、欧米圏はまだ「初めての日本」という層が多い。それぞれのフェーズに合わせた情報提供が必要です。

先ほどのカスタマージャーニーに基づいて施策を整理することもありますが、前提としてその施設の魅力は何なのか?誰がターゲットなのか?を整理した後、発信に向けたプランニングからコンテンツ開発、プロモーションまで実行してく必要があります。
伊藤: インバウンド施策を「世界80億人を相手にするマーケティング」として捉えると、砂漠に水をまくようなもので、なかなか成果が見えにくい。自分たちの事業における「オアシス」が何なのかを見極めることが重要です。
例えば富良野なら「Furano bonchi powder」が世界中のスキーヤーやスノーボーダーにとってのオアシスになります。一括りに「インバウンド」とするのではなく、誰が何を目的に来ているのかを理解し、自分たちの強みと掛け合わせることが大切ですね。
大企業とスタートアップの「共創」を成功させる3つのポイント
青木: 西武グループは様々なスタートアップと連携しています。西武グループのような大企業とスタートアップが連携する上で大事なポイントはなんだと思いますか?
伊藤: 大企業とスタートアップが組む際にうまくいくポイントは3つあると思っています。
- ミニ北極星: 目指すべき大きなゴールは一致していても、そこに至るまでの小さなステップやルートを細かく擦り合わせること。
- 凸凹(でこぼこ)関係: 両者の「強み」を掛け合わせるのではなく、大企業の「弱み(困りごと)」と、スタートアップの「強み」が合致する領域を探すこと。
- 核人財(ビジネス・トランスレーター): 双方の事情を理解し、翻訳してプロジェクトを動かせる「人」が間にいること。
青木: まさにそうですね。現場の方は現場の方で、日々の業務で忙しい。最初は現場の方々が「余計な仕事が増える」とネガティブに捉えてしまうこともありますが、成果が見えてくるとどんどん前向きになってくれます。
伊藤: 観光は日本の成長をけん引する基幹産業として大きなポテンシャルがあります。日本人は自分たちが持っている素晴らしいものに意外と気づけていない。外からの視点を取り入れることで、まだまだ伸ばせると確信しています。
青木: インバウンドは一回来て終わりではなく、日本のファンになってもらい、その後の消費や文化の浸透につながる「循環」を作ることが大事です。伊藤さん、今日はありがとうございました。
インバウンドに関してのご相談はMATCHAへ
MATCHAでは様々な企業、自治体のインバウンドにおけるリサーチ、戦略策定、プロモーションまで一気通関でサポートをしています。関心がある方がいましたら、お気軽に下記問い合わせ先までご連絡ください。
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