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【開催レポート】インバウンドサミットin瀬戸内

2024.12.04

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2024年11月7日、インバウンドサミットin瀬戸内DAY1が愛媛県で行われました。当日は瀬戸内エリアで訪日観光客の誘致に取り組む方々が登壇し、日頃からインバウンド施策や観光事業に取り組んでいる皆様、インバウンド市場に関心を寄せる学生から経営者まで、幅広い層の方にご来場いただき、大盛況のうちに幕を閉じることができました!ここでは当日の熱気に包まれた様子をお伝えします。

イベント概要

日時:2024年11月7日(木)13:00-19:30
会場:愛媛県県民文化会館(〒790-0843 愛媛県松山市道後町2丁目5−1)
参加人数:オンライン:585名 現地参加者:140名

イベント内容

  ■トークセッション 13:00〜17:00
1.オープニングセッション
内容:開会挨拶
登壇者:愛媛県知事 中村 時広氏

2.基調セッション
内容:トークテーマ「なぜ人々は瀬戸内に魅了されるのか」
登壇者:
Airbnb Japan株式会社代表取締役・田邉 泰之氏、瀬戸内リトリート 青凪 by 温故知新総支配人・下窪 日登美氏、四国ツアーズ株式会社地域コーディネーター・出尾 宏二氏、株式会社MATCHA 代表取締役社長・青木優、フリーアナウンサー / いよかん大使 武内 陶子 [モデレーター]

3.トークセッション
内容:「地域住民と世界を目指す観光のカタチ」
登壇者: Walk Japan / CEO , The Japan Travel Company / 取締役会長 ポール・クリスティ氏、一般社団法人キタ・マネジメント CMO 井上 陽祐氏、瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局(香川県瀬戸内国際芸術祭推進課)主幹 今瀧 哲之氏、株式会社MATCHA 取締役 COO 齋藤 慎之介 [モデレーター]

4.トークセッション
内容:「今、訪日客が求めているローカルへの旅とは」
登壇者:・株式会社インターローカルパートナーズ 代表取締役 山本 桂司氏、avex management シンガーソングライター Miyuu氏、インバウンドコンサルタント SNSクリエイター 南 クリスティーナ氏、entohouse BAR&GUESTHOUSE オーナー シーバース 玲名氏、フリーアナウンサー / いよかん大使 武内 陶子 [モデレーター]

■懇親会 17:30〜19:30

アフターパーティー
内容:愛媛県の食材を使った地域ならではの郷土料理「いもたき」や「じゃこ天」などが並び、地酒(さくらひめ)と地ビール(道後ビール)を提供しました。

1.オープニング:開会挨拶「愛媛県のインバウンド観光施策」(中村時広知事)

インバウンドサミット in 瀬戸内は、温かい拍手に包まれながら、愛媛県知事の挨拶で幕を開けました。

松山市長時代から観光に情熱を注いできた知事は、観光への思いとこれまでの取り組みを語り、観光の鍵は「物語性」にあると強調しました。続いて、愛媛県が現在進めるインバウンド事業について紹介。愛媛県ではインバウンドの誘客ターゲット層を明確に定めプロモーションや施策を展開しています。特に注力したのがソウル-松山便。韓国の大手LCC・チェジュ航空との連携により、週4便でスタートしたこの路線は、現在では週14便(1日2便)に増便。搭乗率82~83%を維持し、好調な実績を残しています。効果的な魅力発信が、既存路線での新たなファン層の獲得につながりました。

一方、釜山便では異なるアプローチを採用。韓国ゴルフ連盟との連携を活かし、愛媛のゴルフ場の地理的利便性と高いコストパフォーマンスを訴求するプロモーションを実施しました。試験運航したチャーター便が即座に満席となり、現在では週6便の定期便が運航中。搭乗率は90%と非常に好調です。

さらに、観光振興の一環として、デジタルトランスフォーメーション(DX)にも力を入れています。6年前の5G導入を機に設立された県庁内のデジタルプロモーション戦略室が「トライアングルエヒメ」をはじめとする39のプロジェクトを推進。その中には、MATCHAの提案を基にした観光振興プロジェクトも含まれ、地域の魅力をデジタルで発信する新たな取り組みが進行中です。

愛媛県の更なるインバウンド誘客に向けた挑戦は、物語性とDXを融合し、新たな観光の可能性を切り拓いています。

2.基調セッション 『なぜ人々は瀬戸内に魅了されるのか』

 本セッションでは、いよかん大使の武内陶子氏がモデレーターとなり、パネリストたちに以下のような質問をしながら、インバウンド市場を魅了する瀬戸内の魅力について議論を深めました。

「インバウンドは都市部に集中している印象もありますが、地方でのインバウンド市場に関してどのように感じていますか?」
「地域に訪れる訪日のお客様は、どんなことに魅力を感じていますか?」
「海外の方に響く魅せ方のコツなどはありますか?」

 パネリストのコメント

「今年の上半期だけで1270以上の市町村で物件を提供し、すでに多くの地域で送客が実現しています。全国1700を超える市町村の中でも、多くのお客様がさまざまな場所を訪れており、地域の魅力が広がりつつあります。

観光の魅力は特別な体験ではなく、「普段の生活」にあると感じています。例えば、ある方が海外のお客様をお墓参りに連れて行ったところ、想像以上の感動を得たそうです。「明日も連れて行ってほしい」と頼まれるほどでしたが、お墓参りは頻繁に行くものではないためお断りしたものの、日常の風景にこれほど喜ばれることに驚いたといいます。普段の生活を垣間見ることができるだけで、訪問者は大満足するのです。

また、食文化や歴史、アウトドアなど、日本各地には豊富なコンテンツが揃っています。東京でも興味深い事例があります。80歳のあるおばあちゃんがAirbnbに登録し、英語が話せないにもかかわらず、身振り手振りでコミュニケーションをとる姿が大人気です。どのアプローチでも最終的には、地域の人々が主役となり、彼らの生活や文化が訪日客を魅了するのです。」
– AirbnbJapan株式会社 代表取締役 田邉 泰之氏

 「ガイド付きで観光地を巡る方も多くいらっしゃいますが、一方で 『もっとローカルな体験をしたい』というニーズが増えていると感じています。私たちにとっては日常的で特別ではないものが、訪問者にとっては豊かな価値を持つと再認識させられます。そのため、まずは私たち自身がその価値に気づき、理解することが大切だと強く感じています。

館内での体験はもちろん大切で、私たちもお客様の満足度向上に努めています。しかし、地域全体を巻き込んだ体験を提供することで、お客様の喜びがより大きくなると実感しています。特に最近、このことに気づかされる場面が増えており、地域全体での体験価値を高める重要性を改めて感じています。」
-瀬戸内リトリート 青凪 by 温故知新 総支配人 下窪 日登美氏

「徳島県も外国人観光客が増えており、年間宿泊者数は約5万人と少数ながら、そのうち約43%が香港からの訪問者です。次いで台湾、中国本土、アメリカ、フランスと続きますが、今年はフランスが他国を追い抜く勢いで、ヨーロッパからの訪問者が増加している状況です。

ガイドが重要なのは、観光客の体調や興味を察知し、柔軟に案内内容を調整することです。食に関しては、食べること自体ではなく、焼いている職人との交流が印象的で、こうした職人との会話が忘れられない体験となるのです。

高級グルメやおしゃれな欧風料理も良いですが、田舎の地域では、ランチ自体が人と交流する手段となり、「交流ランチ」としての価値が大きいと感じます。料理を作るお母さんや、焦がしてしまった大判焼きを焼く職人の話が、訪日客にとって楽しい思い出となるのです。
最終的には「人とのつながり」が鍵であり、人間関係の大変さもありますが、そこにこそ幸せや楽しみがあると強く感じています。」
– 四国ツアーズ株式会社 地域コーディネーター 株式会社地域ソリューション パートナーズ徳島支社 アドバイザー 出尾 宏二氏

最後は、各パネリストより瀬戸内を一緒に盛り上げていこうというエールが送られました。

3.トークセッション:『地域住民と世界を目指す観光のカタチ』

 本セッションでは、株式会社MATCHAのCOO齋藤がモデレーターとなり、パネリストたちに以下のような質問をしながら、住民たちを巻き込みながらいかに観光として発展するかについて議論を深めました。

「住民の方々とどのように合意形成されていたのでしょうか?」
「世界から注目されていく地域になる中で、地域住民との関係性の変化は?」
「インバウンドを受け入れるにあたり、批判的な意見などもらうことはないのでしょうか?」

 パネリストのコメント

「当初、「現代アートで島を再生する」と伝えても、地元の方々からは「何のこと?」という反応が多く、説明だけでは理解を得るのが難しい状況でした。

そこで、理屈よりも「本気で島おこしをしたい」という熱意を伝えることが鍵となりました。最初は、私自身の熱意や思いを地元の方々に信じてもらえるかどうかが重要で、「この人が言うなら」と思ってもらえなければ動き出せなかったと思います。

幸い、直島という先行事例があり、「直島のような小規模なものができます」と具体的なイメージを示せたのは大きな助けになりました。小さくスタートし、熱意を持って説明を続けたことが、瀬戸内の可能性を信じてもらう一歩となり、観光の盛り上げにつながったと感じています。」
ー瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局(香川県瀬戸内国際芸術祭推進課)主幹 今瀧 哲之氏 

「近所のおばちゃんたちから、「なんか世界一(※)になったらしいけど、なんでなん?」と聞かれることがあります。その際に少し説明をするのですが、実際に「私たちに何かできることはないの?」と声をかけてくださる方が多く、地元の関心が高まっていると感じます。

観光は、外部の第三者や海外の方からの視点で「この地域って素晴らしいものなんだ」と気づかせてもらえる部分が大きいです。私自身、2017年にUターンで地元に戻ってきたとき、周囲は空き家だらけの状況でした。約200件の古民家のほとんどがボロボロで、このままではいけないと感じ、「ホテルにするしかない」と決断しました。

そして2020年から「NIPPONIAHOTEL 大洲」をスタートさせ、日本最大の分散型ホテルを展開しています。この取り組みが評価され、持続可能な観光地として世界的にも高い評価を得ることができました。」ー般社団法人キタ・マネジメント CMO 井上 陽祐氏 
※愛媛県大洲市は2023年3月にオランダの国際認証団体グリーン・デスティネーションズが選ぶ「世界の持続可能な観光地」の「文化・伝統保全」部門で世界1位を獲得。

「私たちが目指しているのは、なるべく地元の人々に収益が循環し、生活基盤が強化されるような仕組みです。これは単なる一過性の取り組みではなく、今年も来年も、さらにその先も続けていく中長期的な目標です。地元の経営者や住民が、自分たちの生活基盤が強化されていると実感し、投資を続け、良い循環が生まれることが理想です。その結果、子どもたちや孫世代も「この地域には可能性がある」と気づき、UターンやIターンで戻ってくる人が増えるのです。

このような現象は瀬戸内だけでなく、他の地方にも共通することです。そのため、地元の人々がその恩恵を実感し、より積極的に関わっていただける仕組みを作ることが非常に重要です。経済的な効果が地元に還元されることで、次の企画へのモチベーションが高まり、地域全体が活性化します。」
ーWalk Japan / CEO , The Japan Travel Company / 取締役会長 ポール・クリスティ氏

4.トークセッション:『今、訪日客が求めているローカルへの旅とは』

 本セッションでは、いよかん大使の武内陶子氏がモデレーターとなり、パネリストたちに以下のような質問をしながら、訪日客がローカルに何を求めているかについて議論を深めました。

「何を求めて皆さん瀬戸内までいらっしゃるのでしょうか?」
「地方の魅力ってどんなところにあると思いますか?」
「受け入れていく側の心構えは、どんなことが必要なのでしょうか?」

 パネリストのコメント

 「ゲストに旅の計画について聞いたところ、まず最初にGoogleマップを使って訪れるエリアを大まかに決めるそうです。例えば、四国全体を開いて、そこから少しずつズームしていきます。その中で特に重視するのは「自然の割合」。衛星マップに切り替えて、自然が多いエリアや山間部の集落を探し、そこに興味を引かれるかどうかを判断すると言っていました。さらに、Googleマップでは写真や口コミが多い場所が目立つため、それを参考にしながら周辺エリアを設計していくそうです。このようなスタイルで旅をする人は意外と多いのではないかと思います。」
ーentohouse BAR&GUESTHOUSE オーナー シーバース 玲名氏

「日本の素晴らしさは、時間の流れを感じられるところだと思います。300年、400年、あるいは500年前に作られたものに触れながら、時代を超えた空気を味わえるのが魅力です。たとえば淡路島では線香作りが有名で、実際にその体験をさせていただきました。

日本には、体が震えるほど特別な場所が数多く存在します。そんな特別な雰囲気や文化を感じたくて、私は日本全国を旅しているんです。」
一インバウンドコンサルタント SNSクリエイター 南 クリスティーナ氏

「例えば、和歌山の熊野古道や自転車ツーリズムには「ガチ勢」向けのコンテンツもありますが、初心者や興味を持つ人々が参加しやすい環境づくりが重要です。途中離脱が可能な「逃げ道」を用意することが、観光振興の鍵となります。

専門的なコンテンツは関心層には魅力的ですが、裾野を広げるには課題があります。大切なのは、誰でも気軽に参加でき、安心して楽しめる環境を整えることです。

例えば、サイクリングツアーでバス帰宅の選択肢があったり、食事の好みを気軽に伝えられる雰囲気があると、旅の快適さが向上します。地域は「逃げ道」を含めた柔軟な対応で、幅広い観光客が楽しめる体験を提供することが求められています。」
ー株式会社インターローカルパートナーズ 代表取締役 山本 桂司氏

「英語のメニューとか、もう少しわかりやすい案内があれば、言葉の壁があってもスムーズにやり取りできるのかなと思うこともあります。でも、旅行のときにローカルな場所に行きたいと思って、そこに日本語のメニューが出てきたら、ちょっとがっかりするかもしれません。便利ではあるけど、なんだか観光地っぽくなってしまって、個人的な満足感が少し下がる気がするんですよね。だから、すべてを英語にすればいいわけじゃないんだなって、愛媛で訪日客と地元の方とのやりとりを見て改めて感じました。」
ーavex management シンガーソングライター Miyuu氏

5.クロージングセッション

今回のインバウンドサミットin瀬戸内を通して、4つの気づきと学びを得たとMATCHAの代表である青木が語りました。

まず1つ目は、戦略を実現するためにはリーダーシップが不可欠であること。愛媛県知事の挨拶からも、多くの方が強いリーダーシップを感じたと思います。そして、日本の日常が世界から見ると非日常であるという点も重要です。私自身、今年世界一周をした際、外国から見る日本の文化や生活がいかに特別で魅力的であるかを再認識しました。3つ目に、地域文化を守るためには誇りを持ち、他者から認められることが重要だと感じました。世界から来る観光客が増えることは、自分たちの魅力を再認識するチャンスだと思います。最後に、観光業の進展には、KPIだけでなく、外部からの評価や反響も重要な指標であると感じました。訪れる人々の声やその反応が、さらなる魅力創出に繋がると考えています。他者や世界の視点を得ることで、観光事業はより深い理解と発展を遂げることができるでしょう。

参加者からの声

「愛媛県でのインバウンドサミット開催を通じて、瀬戸内が全国的な注目を集めるきっかけとなり、とても嬉しかったです。世界一の持続可能な観光地と評価される大洲では、現場の生の声を聞くことができ、大変勉強になりました。岡山の小さな市町村でも参考になる点が多く、貴重な学びの機会となりました。」
「DAY1で、具体的な事例を交えながらお話を伺えたことは非常に貴重でした。DAY2で実際にコンテンツを運営・推進している方々や、ガイドを務める地元の方々のお話を直接聞けたことも大変有意義でした。今後は、地元の方々との連携をさらに強化していきたいと感じました。」
ー岡山県観光連盟 担当者

「それぞれに悩みを抱えながら、目標を設定していることを感じた。先進地域には突破力のある誰か、がいる。その熱量を作るのか、探すのか、なる、のか考えていきたいと思う。」
ー空港関係者

今回参加した皆様と一緒に瀬戸内でのインバウンド市場を盛り上げていきたいですね。

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