【開催レポート】MラボRADIO #06「訪日客が訪れたことで地域も豊かになる受け入れ体制の整備とは?」
2025.02.27
Column

第6回目のテーマは「訪日客が訪れたことで地域も豊かになる受け入れ体制の整備とは?」今回は、田辺市熊野ツーリズムビューロー代表理事の多田稔子さんをゲストに迎え、訪日観光を地域の活性化につなげる方法や、持続可能な観光モデルの構築についてお話を伺いました。
※MラボRADIOとは・・ インバウンドの最前線で活躍する方々が、訪日客の視点に立った実践的な施策や取り組みを語る、ラジオ感覚で楽しめるトーク番組です。「訪日客の心を動かす取り組みとは?」「地域に訪日客を呼び込むためにはどのような工夫が必要か?」といったテーマを掘り下げ、インバウンド施策に取り組んでいる皆様に新たな発想や具体的なヒントをお届けします。
開催概要
開催日時: 2025年2月21日(金)13:00~14:00
登壇者:
スピーカー:
田辺市熊野ツーリズムビューロー 代表理事 多田稔子
和歌山県生まれ。熊野古道が世界遺産に登録されたことをきっかけにインバウンド観光に注力。2019年まで順調に推移していたが、コロナ禍での苦しい3年間を経て、2023年度はV字回復。DMCの売上は、過去最高だった2019年度の168%となった。2023年3月、先駆的DMOに選定。
株式会社MATCHA 代表 青木優
1989年生まれ。東京都出身。明治大学国際日本学部卒。大学在学中に1年間休学をし、世界一周の旅に出る。2012年ドーハ国際ブックフェアの運営に従事。大学卒業後、デジタルエージェンシー augment5 Inc.に所属。2013年に株式会社MATCHAを設立し、代表取締役社長に就任。趣味は旅と温泉です。
田辺市熊野ツーリズムニューローの取り組み
地域と観光が共生するモデル
熊野古道の世界遺産登録を契機に、着地型観光を推進。旅行事業「熊野トラベル」を通じ、観光収益の97.9%を地域内で還元する仕組みを構築しました。特に、長期滞在型の観光を促進することで、地域住民と訪日客が共存しながら持続可能な観光を実現しています。
トーク内容
熊野ツーリズムビューローがターゲットとする観光客とは?
熊野ツーリズムビューローがターゲットとしているのは、熊野古道の本質を理解し、自然や文化を深く味わいたいと考える欧米豪のFIT(個人旅行者)です。世界遺産登録直後は、大型観光バスで短時間滞在する旅行者が多く、地域経済への恩恵が少ない状況でした。しかし、地域の魅力をじっくり楽しみ、長期滞在する旅行者をターゲットにすることで、持続可能な観光モデルを確立。訪日客の消費が地域に直接還元される仕組みを整えました。
また、この受け入れ体制を整えるため、3年間にわたりワークショップを実施。観光事業者や地域住民に向けて、「英語が話せなくても大丈夫」というテーマでハードルを下げてゲームを通じて異文化コミュニケーションを学ぶ場を提供しました。これにより、地域住民の意識改革を促し、観光客の受け入れ体制を強化することができました。
地方の人口減少と観光の未来、テクノロジーの共存
多田さんは、人口減少が観光業にもたらす影響についても言及しました。地域の人口が半減する中で、観光業が生活インフラ維持にどのような役割を果たせるのかを考えなければならないと指摘されました。その解決策のひとつとして、観光業だけでなく大学誘致などの長期的な地域活性化策にも取り組んでいく重要性が語られました。
また、こうした人口減少の中で観光を支えるためには、テクノロジーとの共存も避けられません。観光案内業務の一部をAIで補完することで、オペレーションの効率化を図るなどして、人間が担うべき役割を明確にし、観光業における温かみやホスピタリティをより強化することが重要であると話されました。観光業においてテクノロジーと人間がどのように共存し、それぞれの強みを活かせるかが今後の大きな課題となるとのことです。
持続可能な観光のための地域理解と戦略
観光が地域に定着し、長期的に持続可能なものとなるためには、地域住民との協力が欠かせません。熊野ツーリズムビューローでは、前述の3年間にわたるワークショップを通じて、地域住民が観光を「自分たちの暮らしを支えるもの」として実感できるよう、話し合いの場を設けてきました。
特に、観光によって生まれる収益が地域にどう循環するのかを可視化し、観光がもたらす具体的な恩恵を共有することで、住民の理解を深める取り組みを続けています。そうした機運を醸成するための地道な努力が、観光と地域の共生を可能にする大きな要素となっています。
また、多田さんは「絶望の先にこそチャンスがある」とも語りました。人口減少など差し迫った課題がある中で、新たな観光の形を模索することこそが、持続可能な観光を実現する道であると考えています。地域が厳しい状況に直面するからこそ、革新的なアイデアが生まれ、未来への希望につながるのです。この言葉は、参加者の方の多くの心に響きました。
参加者の声
- 「地域住民の納得を得るためにワークショップを3年間継続した点が印象的でした。」
- 「観光収益の97.9%が地域に還元されている点が素晴らしい。」
- 「インフラ維持や人口減少の影響について考えさせられました。」
- 「二重価格の導入や、観光を起点とした移住促進についての話が参考になった。」
おわりに
今回のMラボRADIOでは、持続可能な観光のあり方について、多田さんの実践的な経験をもとに議論しました。地域と観光がどのように共存し、互いに利益を生む仕組みを作れるか、今後の観光業界にとって示唆に富んだ内容となりました。
次回のMラボRADIO開催情報、過去のMラボRADIOのアーカイブもMATCHAラボで視聴可能です! https://lab.matcha-jp.com/menus/knsjs6ycbsjjxpqo/announcements
引き続き、皆さまとともに日本各地の魅力を世界へ届けていきたいと思います!
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