【開催レポート】MラボRADIO#10“10人に1人の”合う人”に届けばいい”──神津島から学ぶ、インバウンドの「質でつながる」戦略
2025.05.09
Column

2025年4月22日、MラボRADIO第10回では、東京都の離島・神津島から「みんなの別荘ファミリア」を営む田中あやのさん・健太郎さんをゲストにお迎えし、アクセスの不便さを逆手に取った“質でつながる”インバウンドのあり方について深掘りしました。
◾️登壇者
スピーカー
ー 田中あやの・健太郎(みんなの別荘ファミリア オーナー)
2017年、東京の神津島に移住し、「みんなの別荘ファミリア」を運営。宿泊は最低2泊、グループ利用は4名まで等の独自ルールを設け、「自然と会話が生まれる空間」を提供しています。
MATCHAでの執筆記事▼
https://matcha-jp.com/jp/mcm15816
パーソナリティ
ー 西田早織(株式会社MATCHA 広報)
トーク内容
欧米・シンガポールから訪れるゲスト。「星空」「静けさ」「滞在の余白」が魅力に
神津島を訪れる訪日客の多くは、日本に何度も訪れているリピーターが中心。彼らは、便利さや観光名所よりも、「自国の日常にない自然」「心の余白」を求めて神津島にやってきます。
例えば、シンガポールのような都市国家では、夜空に星がほとんど見えないのが日常。 人工の光に包まれた都市で生活している人にとって、海辺に沈む夕日や満天の星空、静寂な雨音は、心に強く残る“非日常体験”です。
実際にファミリアを訪れた各国のゲストからは、
「海に沈む夕日を見たのは人生で初めてだった」
「雨音を聞きながら読書をする時間が、旅の中でいちばん豊かだった」
といった声も寄せられています。
地域の人々にとって当たり前の景色も、彼らにとっては“非日常”。神津島のような自然豊かな場所だからこそ提供できる「余白」や「自然」が、確かな魅力として届いています。
「誰に来てほしいか」を発信に落とし込む
「こういう人に泊まってもらいたい」という思いは、宿のルール設計だけでなく、日々の発信や紹介文にも明確に込めるよう工夫していると語られていました。みんなの別荘ファミリアでは、“旅の過ごし方”そのものを丁寧に伝えることで、価値観の合う旅行者が自然と集まる仕組みをつくっています。
たとえば、滞在中の島での過ごし方や朝食の風景など、実際の時間の流れをイメージできる形で紹介することで、「この過ごし方、いいかも」と共感した人が予約し、そうでない人には無理に刺さらないように意図的に設計されています。
また、「虫が出ることもある」「朝食はパンとコーヒーがメイン」といった過度な期待を与えない情報開示を行うことで、「思っていたのと違った」というミスマッチを未然に防止。結果として、満足度の高い滞在体験と、信頼につながるレビューにつながっているそうです。
実際の口コミでは、「オーナーとの会話が楽しかった」といった声が多く寄せられており、そうした感想がまた“人との交流を楽しみたい”ゲストを惹きつけるきっかけにもなっています。どのような口コミが残るかは、次のゲストを引き寄せるうえで重要な要素になる、そんな視点にも納得が集まるトークでした。
地域との合意形成は「小さな成功体験」から
離島のような小さな地域では、「外国人はちょっと不安」と感じる空気感があることも。それでも、ファミリアには自然と“理解しようとしてくれるゲスト”が集まってくるため、地域の飲食店や住民と接する際にもトラブルは起きず、むしろ「楽しかった」「また来てほしい」といった前向きな声が少しずつ増えているそうです。
オーナーの健太郎さん自身も、「妻と違って英語は話せないけれど、翻訳アプリや表情で気持ちはちゃんと伝わる」と日々実感しているとのこと。自身が今年ベトナムを旅した際、現地のローカル宿で言葉は通じなくてもおもてなしの気持ちをしっかりと感じた体験が、「言語の壁」以上に大事なものがあると改めて気づかせてくれたそうです。
地域内での合意形成も、「理解を広げるために説明し続ける」のではなく、「まずは良い体験をしてもらう」ことが鍵。「外国人は無理かも」と思っていた方が、「意外と大丈夫だった」と感じられるような小さな成功体験の積み重ねこそが、神津島における“共に進む関係性づくり”のリアルなスタイルだといえます。
参加者からの声
- 地方にいる経営者の声をリアルに聞けたことがとても貴重だった。
- 「翻訳は完璧でなくていい、人間力で届く」という言葉に救われた。
- 飾らない言葉と実体験に基づく話ばかりで、非常にイメージが湧きやすかった。
- 「ほどほど」の運営や、「来てほしい人に届く発信」など、持続可能な観光のあり方に納得。
- 「思ったのと違った」を減らすことがブランディングになる、という視点にハッとさせられた。
- 神津島に行きたくなった。お2人の人柄が本当に魅力的だった。
おわりに
「来てくれた人全員に満足してもらうのではなく、“この人にだけは絶対に満足してほしい”と思えるゲストに届けばいい」
そんな考えが実践されている神津島の取り組みは、リソースやアクセスに制約がある地域にとって、大きなヒントとなるはずです。
「数ではなく、質でつながる」インバウンド施策のヒントを得たい方は、ぜひアーカイブをご視聴ください。
▶️ アーカイブ視聴はこちら(MATCHAラボ無料登録で視聴可能)
https://lab.matcha-jp.com/menus/knsjs6ycbsjjxpqo/announcements
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