CASE STUDY

インバウンド戦略策定が導く社内意識改革と訪日旅行者へのアプローチ|三井不動産ホテルマネジメント

2024.09.30

インバウンドマーケティング事業

観光庁の直近の発表では、4月以降、毎月300万人を超える訪日旅行者が日本を訪れており、年間で過去最多の3500万人の来訪も視野に入っています。

日本を訪れる旅行者のほとんどが利用するのが「宿泊施設」です。コロナ禍を経て訪日旅行者の市場ごとの特性が変化した中、株式会社三井不動産ホテルマネジメントは各国市場の現状に基づく戦略的なマーケティング展開をMATCHAと共に実施しました。

 今回は、日本屈指のホテルチェーン「三井ガーデンホテル」ブランドなどを運営する株式会社三井不動産ホテルマネジメントのセールスマーケティング部マネージャー、入山惇一さんと株式会社MATCHAインバウンド戦略部事業部長、伊藤健太郎に、MATCHA広報部が取材しました。


PROFILE

株式会社三井不動産ホテルマネジメント
事業推進本部 セールスマーケティング部 マネージャー
入山 惇一

2008年三井不動産株式会社入社。ザ セレスティンホテルズのブランド立ち上げ・ホテル開発を経て、コロナ禍にはホテル・リゾート事業の再建計画を策定。2023年から株式会社三井不動産ホテルマネジメントに出向し、国内外のマーケティングに従事。

株式会社MATCHA
インバウンド戦略事業部 事業部長
伊藤 健太郎

MATCHA創業期を経て、日系旅行会社でインバウンドプロモーションや訪日MICEに従事。2021年にMATCHAに復帰し、営業組織の統括及び官公庁や企業のインバウンド戦略立案・実行を支援しています。公社)三重県観光連盟インバウンドマーケティングアドバイザー(観光庁 外部専門人財)/インバウンドサミット事務局長。


INDEX

  • MATCHAを選んだ理由「パートナーとしての柔軟性と信頼性」
  • 取り組み実施内容とMATCHAへの印象
  • 調査を通じて理解が深まった戦略と社内の変化
  • 戦略的KPI設定と旅行者実態把握の重要性
  • 今後の施策展開と旅行者への提供価値の展望

MATCHAを選んだ理由「パートナーとしての柔軟性と信頼性」

最初に、株式会社三井不動産ホテルマネジメントにおける入山さんの役割について教えていただけますか。

入山マネージャー:普段、私は3つの部門を兼務しています。セールスマーケティング部では海外および国内マーケティング、ブランドプロモーション部では会員組織「MGH Rewards Club」の戦略と経営、レベニューマネジメント部では販売状況の情報収集、これらを効果的に組み合わせ売上向上を目指しています。それとは別に、2023年7月に「インバウンドマーケティングタスクフォース」という部門横断チームを立ち上げ、事務局としてインバウンドマーケティング戦略の立案や施策の実施を推進しています。

インバウンドマーケティング戦略を定めようと思ったのはなぜでしょうか?

入山マネージャー:コロナ明けのインバウンド市場のV字回復に伴い、三井ガーデンホテルの訪日客の利用は大幅に増加しました。この機会を最大限に活かし収益を拡大するためには、好調なマーケットに身を任せて訪日客を待つのではなく、自ら積極的にインバウンドを獲得する必要があると感じたからです。

伊藤:初めてお会いしたとき、担当者の方々がさまざまな施策を実践されている中で、統一された方針がなく、「これで正しいのか?」と悩まれている印象を受けました。

入山マネージャー:まさにその通りです。施策の意味を問われても明確な根拠がなく、社内での理解を得るのが難しいだけでなく、推進している自分自身も自信を持てない状況でした。

伊藤:そういった課題感を解消するためにMATCHAを頼っていただけたのは、とても嬉しいです。

観光関連や広告会社とのお繋がりもあったと思いますが、どうしてMATCHAを選んでいただけたのですか。

入山マネージャー:

インバウンド戦略の実施に向けてパートナーを探す中で、様々なインバウンドマーケティングを手掛ける企業とお会いしました。各社にはそれぞれ強みがあるものの、対応言語の制限や、外部への再委託による高額な業務報酬、機動力不足など当社の求める条件に合うパートナーを見つけるのは難しい状況でした。その中で、MATCHAさんは幅広い言語に対応されていて、調査から戦略立案、施策実行まで社内リソースで一貫して実施しているため、スピーディーかつコストも合理的で、我々の求める条件に合致しました。

伊藤:嬉しいです。入山さんとは取り組み始動前にもインバウンドサミット(※MATCHAが運営事務局を担う日本最大級のインバウンド業界カンファレンス)などでもお話しさせていただきました。そこでお話しいただいた入山さんが実現したいことなどからもバックキャストし、どのような取り組みにしていくかを濃密なコミュニケーションを踏まえ、短期間で具体化していきましたね。

入山マネージャー:MATCHAさんに決定する前に、様々な会社と話す中で気づいたのは、完璧なインバウンドマーケティングのノウハウを持つ会社は少ないということです。インバウンドの市場環境は常に変わるものであり、この変化の激しい市場でパートナーを選ぶ際には、共に考え、手を動かし、柔軟に軌道修正しながら、三井不動産ホテルマネジメントのインバウンドマーケティングを確立できる会社が理想だと考えていました。伊藤さんと会話していく中で、柔軟な考え方と高いコミュニケーションスキルに触れ、「この方となら一緒に三井不動産ホテルマネジメントのインバウンドマーケティングを作っていけそうだ」と確信しました。

取り組み実施内容とMATCHAへの印象

取り組みでは具体的にどのようなことに取り組んだのですか?

入山マネージャー:MATCHAさんに依頼する前は、とにかく撃てる弾は何でもを撃ってトライしようというスタンスでやっていましたね。ただ、もう一段階上にいくためには、社内認識の統一やゴールを意識した施策が必要と感じ、戦略の根拠となる顧客調査からマーケティング戦略立案までの一連の伴走をMATCHAさんに依頼しました。

伊藤:入山さんからお話を伺った際には、インバウンドマーケティング施策の効果的な実施が重要であることはもちろんですが、その前に社内での納得感を得るための説得材料を用意し、社内の理解を促進することが求められると感じました。そのため、インバウンド市場に対してインバウンドに関わる社内の皆さんが同じベクトルで向き合えるように、という社内の視点も含め、さまざまな議論を重ねながら施策を進めていきましたね。

今回の取り組みでは、これまでの施策を活かしつつ、株式会社三井不動産ホテルマネジメントがどんなお客様にどのような情報を提供していくのかというコミュニケーション戦略を策定しました。また、ホテルブランドとしての将来像を踏まえた調査設計を行い、国ごとの定性・定量調査に基づいたカスタマージャーニーを作成しました。さらに、今後のアクションプランや、そのPDCAを回すうえでのKPIやKGIの設定までを一緒に進めました。

取り組みの過程でMATCHAに対してどのような印象を受けましたか?

入山マネージャー:インバウンドに限らず様々な調査を経験してきましたが、今回の調査では、設計のスピードや実施のスムーズさが非常に良かったと感じました。具体的には、打ち合わせで依頼した内容をただ文字に起こすだけでなく、調査背景を理解した上で調査内容をまとめていただいたおかげで、こちらの言葉が足りなくても、意図を汲み望んでいた調査を的確に設計してもらえました。その結果、調査実施までのプロセスをスピーディーに進めることができました。

伊藤:それをお聞きして、とても励みになります。事前に会話をする中で様々な背景や課題をヒアリングさせていただいていたので、意図を汲みながらこちらでも最適な調査内容を提案させていただきながら、調査設計をすることができました。

入山マネージャー:調査に限らず、すべてのコミュニケーションにおいて、背景まで意図を汲んで対応していただいたので、一緒に取り組めて本当に良かったと感じています。

伊藤:とても嬉しいです。我々としても、取り組みを完遂するだけでなく、実際に御社が戦略を活用いただくことで、訪日客の体験がより豊かになれば、という想いを持っていますので、過程の議論はとてもありがたいものでした。

運営施設の価値をデータを踏まえて理解することで、重なりを増やしていくという考えを念頭に取り組みを推進

調査を通じて理解が深まった戦略と社内の変化

調査を実施し、新たな発見や気づきはありましたか?

入山マネージャー:訪日客への調査を実施したことで、予想通りの結果が得られた部分もありましたが、私たちが想定していなかった点が重要視されていることも分かりました。具体的なメディア名は今回の成果物なので差し控えさせていただきますが、訪日客にとってそれほど重要ではないと思ってメディアが、調査を通じて、実は非常に重要なメディアである、ということを改めて認識しました。

伊藤:実際に観光庁などが発表しているデータでも、使用しているチャネルなどは公表されていますが、細かい意思決定行動までは調査として出ていないですよね。今回、カスタマージャーニーを調査を経ながら作成していきました。ただ、シンプルなカスタマージャーニーというよりは、それぞれの意思決定の背景を反映した細かなカスタマージャーニーが出来上がりました。今後、御社が施策を実施していく上でのナレッジになればと思っています。

単に新たな戦略を打ち出すだけでなく、既存の施策実施状況なども踏まえた戦略を策定。
マーケティング戦略の策定を経て、社内ではどのような変化がありましたか?

入山マネージャー:単に戦略を策定するだけでなく、社内・プロジェクトメンバーの納得感を大切にしました。今回の調査項目の中には、JNTO等の公表されている調査でもカバーされているものもあえて組み込みました。同じ結果になったとしても、自分達で設問を考え、聞きたいことを明確にした調査結果には納得感があります。逆に、外部の調査結果では調査対象、背景が自社と異ると、結果に納得しにくいことがあります。今回、調査内容を自分で考え、実施して分析することで社内での納得感を得られおかげで、自信を持って同じ方向に進むことができたと考えてます。

伊藤:そういった社内での変化を生み出せたことは嬉しいです。実際に施策を行う中でもチームとしても変化はありましたか?。

入山マネージャー各施策を実施する中で、インバウンドに対する基本的な理解がチーム内で共有されたことで、話が噛み合うようになりました。以前は、例えばYouTubeでKOL施策を行おうとすると、「なぜYouTubeなのか?」「なぜこの人なのか?」といった質問が飛び交い、背景から説明しなければなりませんでした。。しかし、戦略を策定することでチーム全体の解像度が上がり、施策に対してチーム一枚岩でスムーズに取り組めるようになりました。

戦略的KPI設定と旅行者実態把握の重要性

調査から戦略まで実際行ってみて、施策を行う上で変化は生まれましたか?

入山マネージャー:そうですね。KPIの策定もしっかりできたことで、PRやマーケティング施策の優先順位が明確になり、多様な媒体や手法の中で何を優先すべきかの意思決定がスムーズになりました。また、今回設定したKPIやKGIに基づいて、どのように施策を展開すればより効果的かについての議論もして実行まで移しやすくなりました。

伊藤:今までは、施策を積み上げた結果からPDCAを回していたところを、今回KPIという共通の基準を設定できたことで、KPIから施策を逆算できるようになったのではないかなと思います。

調査を実施したことで、訪日客の実態も見えてきたと思いますが、いかがでしたか?

入山マネージャー:この取り組みを実施するまでは、顧客の動きがわからなかったので、今回定めたKGIになるとは思っていませんでした。

伊藤:調査結果が出て、KPIを含めた戦略をまとめる段階で、何度もやり取りさせていただいてきましたね。社内でも推進しやすいような目標設計をお互いに意識しながら設計していけたのかなと思います。訪日客も国別で見てみた時、使用している媒体の背景を理解できたことも興味深かったですよね。市場ごとの特性や国別で印象的だったことってありますか?

入山マネージャー:アメリカと中国は、地理的、社会的や政治的な大きな要因があって特徴的な行動特性があるというのも、改めて認識することができました。他の市場に関しても、それぞれの行動特性の背景を知ることができたので、施策を実施する際の指針とすることができました。

今後の施策展開と旅行者への提供価値の展望

今回の取り組みを経て、挑戦してみたいことなどありますか?

入山マネージャー:旅マエ中心に今回の取り組みを実施していましたが、会社全体としては、今後旅ナカも整備していけたらなと思っています。旅ナカになると連携部署が増えるので、浸透までは時間がかかるかもしれませんが、訪日客への理解など同じ目線で実施していけるようになれたらと思っています。

伊藤:今後そういった取り組みを進めていく中で、今回の調査でわかったことが活かされたり、更なる解像度アップもを進められていけると嬉しいですね。入山さんは、各組織のことを考えてらっしゃるので、持続的な運用が可能な戦略に向き合えたことは嬉しいです。

訪日客に合わせた戦略を実施することで、旅行者の体験がより豊かでワクワクするものになってくことに期待したいですね! 本日は、どうもありがとうございました。

インバウンドマーケティング戦略の策定など、訪日客へのアプローチでお困り事があれば、お気軽にMATCHAまでお問い合わせください。

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