CASE STUDY

成田国際空港「SHIKISAI GARDEN」リニューアルの裏側とMATCHAとの共創、そして空港の未来

2026.07.02

インバウンドマーケティング事業

年間四千万人が行き交う日本の玄関口、成田国際空港。インバウンド需要が急回復するなか、第1ターミナル中央ビル5階が、日本の美意識と自然を感じられる新エリア「SHIKISAI GARDEN」として大々的にリニューアルされました。

今回は、成田国際空港株式会社の高須 英一郎様、大河原 啓様に、リニューアルに込めた並々ならぬ想いや、MATCHAと共創したプロモーションの裏側、そして「ONE TERMINAL(ワンターミナル)構想」を見据えた成田空港の未来についてお話を伺いました。

第1ターミナル「SHIKISAI GARDEN」リニューアルの背景と狙い

どういった経緯でリニューアルの準備がスタートしたのですか?

高須さん:実はこの第1ターミナルの中央部分(5階)は、1993年に一度リニューアルされて以来、約30年間まったく手つかずの状態でした。広さにして約8,000平米もある大規模なエリアですが、非常に無機質で殺風景な空間となっていたのです。

プロジェクトの構想自体は2020年頃からありましたが、本格的に動き出したのは2022年頃です。当時はコロナ禍の真っ只中で、お客様は激減し、会社としても非常に厳しい経営状況でした。その中で「直接的な収益が見えにくい空間づくりに投資する」という最終的な判断をしていただいた経営陣には本当に感謝しています。

経営層には、日本の顔であり表玄関である成田空港として「このままだと世界の空港間競争に負けてしまう」という強い危機感を共有し続けました。当時、成田空港のスカイトラックス(世界の空港評価)は4スターにとどまっており、シンガポールのチャンギ空港や韓国の仁川空港、国内の羽田空港が文化度の高い滞在空間を作る中で、成田だけが取り残されてしまうという強い危機感があったからです。

今回のリニューアルに込めたコンセプトや、訪日客に提供したかった価値

高須さん:成田空港の歴史を紐解くと、この場所は元々緑豊かな「里山」であり、すぐ隣の三里塚は「桜の名所」でした。四季の移ろいを感じられる風光明媚な土地のポテンシャルを活かし、訪日客には「最後の日本の風景」を、日本人には「非日常空間」を提供したいと考えました。「自然」「日本の美」「桜」「水の流れ」といった日本の原風景を五感で感じられる空間を目指したのです。

ターミナル内の空間設計や施設構成における主な変更点とこだわり

大河原さん:一番悩んだのは、4階を通行するお客様の目線を、いかにして5階へ上げるかという点でした。最初は「本物の水を使った滝」を作ろうと検討していたのですが、コストやインパクトという点で断念しました。その代わりに採用したのが、高知の虎竹(とらたけ)等を使用した巨大な「竹アート」です。本物の水を使わずに「水の流れ」を表現することで、日本の文化度の高さを表す素晴らしいシンボルになりました。

高須さん:また、より細部までこだわるために、設計会社と膝詰めで議論を重ねたからこそ、書の間、茶の間、居の間といったリラックスエリアやデジタルアート、足湯といった質の高い空間づくりが実現できたと考えています。

プロモーションパートナーとしての「MATCHA」採用理由と実施結果

プロモーションの重要性と、パートナーにMATCHAを選んだ背景

[写真左から、株式会社 MATCHA 青木、成田国際空港株式会社の高須様、大河原様]

高須さん:5Fが有効に使われておらず、活気のないスペースであったため、文化度が高くて娯楽性のある良質な空間にして、多くのお客様に利用していただきたいと考えていました。成田空港を利用するインバウンドの約7割はアジア圏のお客様であるため、アジア圏のインバウンド層に圧倒的な強みとリーチ力を持つMATCHAさんの提案は、我々にとって非常に腹落ちするものでした。

プロジェクト期間中の連携(映像制作、メディア発信、PR等)における評価

高須さん:オープンに合わせて開催した「桜イベント」は、成田空港の歴史上でも前代未聞の取り組みでした。かつての反対闘争を想起させる三里塚の地で「お祭りの山車」と「お神輿」を、普段は絶対に立ち入れない「空港の制限エリア」に入れたのです。

大河原さん:MATCHAさんとの毎月のミーティングの中で「制限エリアで桜イベントをできたら面白いんじゃないか」というところから始まり、実際に形になりました。満開の桜、着物の演舞、山車、そして約30名の海外インフルエンサー(KOL)が一体となり、すぐ背後を巨大な飛行機が通り過ぎていく。あの圧倒的な映像は世界に拡散され、多大な反響を呼びました。

https://www.instagram.com/reel/DW80U2ikmpb

施策を通じて得られた具体的な成果や、周囲からの反響

高須さん:プロモーションを通じて、当初の目標を大きく上回る成果を獲得することができました。MATCHAさんのPRによって、海外のお客様に向けた総インプレッション数は約1,300万回以上にのぼりました。特に、約30名のインフルエンサー(KOL)の方々を制限エリアの特別イベントにお招きした様子は大きく拡散され、関連動画の総再生回数は200万回を突破し、中には単一で140万回以上再生された動画もありました。

ネット上の反響だけでなく、実際のビジネスや集客にも明確な効果が表れています。5階の飲食エリアの売上が向上したほか、飛行機に乗る目的ではなく、ショッピングや休憩など「空港に遊びに来る」周辺地域の一般のお客様が目に見えて増えました。

大河原さん:さらに副次的な効果として、国内メディアでも多数取り上げていただきました。オープンしてからも「撮影ロケ地として使わせてほしい」といった依頼が絶えず、SHIKISAI GARDENが成田空港の新たなシグネチャー(象徴)として定着しつつあると実感しています。

成田空港の今後の展望とビジョン

インバウンド需要がさらに高まる中での、成田空港が目指す姿。ONE TERMINAL構想について

高須さん:政府が2030年に訪日外国人6,000万人という目標を掲げる中、羽田空港はすでに拡張の限界を迎えています。日本の経済成長を支えるインバウンド需要の受け皿になれるのは、首都圏では成田空港しかありません。現在、第3滑走路の建設を進めて機能強化を図っていますが、当然それだけでは既存のターミナル(第1〜第3ビル)のキャパシティが溢れてしまいます。そのため、第2の開港となる新しい成田空港構想の検討を進めています。

大河原さん:今回のプロジェクトを通して最も強く実感したのは、空港の「機能的な便利さ」への投資だけでは、お客様の満足度には限界があるということです。SHIKISAI GARDENで実験的に提供したような、ワクワク感やリラックスできる「情緒的な価値」が、国境を越えて多くのお客様の心に深く刺さることが証明されました。今後の新しいターミナルづくりにおいては、機能面で世界トップレベルの最新設備を導入しつつも、それ以上に日本の文化やストーリーをいかにお客様に体験していただくかが重要になります。

高須さん:そうですね。次の大きなターミナル改修の際には、日本の心で世界とつながる美意識、例えば桜の要素を全面的に打ち出した「桜エアポート」のような統一感のあるコンセプトで、成田空港のブランドを世界に発信していければと考えています。

(取材:MATCHA 青木 優、安島 知美 編集:飯野 太陽)

スタッフリスト
プロデューサー:安島 知美、青木 優
プロジェクトマネージャー:永島 衣里
プランナー:岩城大志(オフサイド)、武田智生
クリエイター:チョウ・イーゴウ
英語編集: ラモーナ・ツァラヌ
繁体字編集: ファン・シンイー
記事カメラマン: クリス・モリソン
映像制作:中川大己
外部協力会社:株式会社ぬるぬる(中国圏対応)
外部協力会社:ENGAWA株式会社(韓国圏対応)


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